第10回 戦時下の祭り

 公開日:2000.03.11  最終更新日:2020.07.14

  • 第10回 戦時下の祭り
場所
東海市横須賀町
コメント

ここに1枚の古い写真があります。時は昭和12年9月28日。撮影場所は多分、知多郡横須賀町(現東海市横須賀町)の愛宕神社前だと思います。
昭和12年といえば、日中戦争が始まった年で、昭和6年から「満州事変」、「2。26事件」と続き戦時色が色濃くなりだした頃でしょうか。(もちろん私はまだ生まれていません)日本軍の真珠湾奇襲作戦はこれから4年後のことです。
ところでこの写真、手前の後ろ向きになっている山車は本町組です。曳き綱がこちら側に伸びてきていますから、今からどんてんなのでしょう。
注目していただきたいのは、その向こうに見える八公(公通組)の山車です。前棚の下に国旗(旭日旗)を掲げていますね。戦時下の祭りならではの光景と思います。この光景を瞼に焼き付け出征していった兵隊さんも大勢いたのではないでしょうか。
ただし、八公の山車の前棚に見える采振人形も、日の丸の旗を持っていますが、これは最初からで戦前も戦後も日の丸だったと思います。
聞くところによると、横須賀では山車の前で二本の日の丸をクロスさせて掲げ、曳いたこともあったそうです。これは知多半島では現在も南知多町内海や半田市板山でも見られる光景ですが、これらの地区が戦時中の習慣を今に引き継がれているのかどうかは定かではありません。
ちなみに、横須賀の山車祭りは戦中・戦後も絶えることなく続けられ、中断したのは祭礼直前を襲いこの地に大きな打撃をもたらした昭和34年の「伊勢湾台風」の年だけだったそうです。
戦時中の祭りが果たして楽しかったのか、戦時中だから一際楽しかったのか、知る由もありませんが、今が平和でよかったと思わずにはいられません。
(ただ、相も変わらず住みにくい世の中なのは確かですけど…)
この貴重な写真は横須賀町本町組江口氏からお借りしました。