中ノ筋町陵王車調査報告

戦前の名古屋三大祭に記録では32輌の山車が曳かれている。歴史をさかのぼれば、三之丸天王祭には見舞車が多数曳かれており、現地に存在するもの、他所へ転売したもの、焼失したものの他に所在が不明になっている山車が多々存在する。
天王祭は明治25年に神輿2基を新調し新式の祭礼を始めた。その祭礼を記念して刷られた須佐之男神社神輿渡御の図には当祭礼に関わった山車が描かれており、その中の1輌に記録上存在しない中ノ筋町の陵王車が描かれている。まずは天王祭見舞車の歴史を踏まえながら中ノ筋町の陵王車の存在を調査する。

三之丸天王祭見舞車

見舞車とは天王祭に曳かれる車楽〈2輌）に献灯を目的に造られた山車の事で伊勢門水の「名古屋祭」によれば16輌が参加した事が記述されている。

◎現存　▽所在不明

碁盤割町内 2輌

●車町	和布刈車	（戦災焼失）
◎益屋町	靭猿車	（明治30年美濃市常磐町が購入〉

名古屋村　5輌

●新道町	翁　車	(戦災焼失）
●新道町	殺生石車	(　〃　）
●郷	散手車	(　〃　）
●小伝馬町	湯取車	(　〃　）
●万松寺領	浦島車	（戦災焼失、旧車は明治12年美濃市泉町が購入）

広井村　9輌

◎上花車町	紅葉狩車	(現存）
◎下花車町	二福神車	(現存、旧車も浜北市宮口地区にて現存）
◎内屋敷	唐子車	(現存）
◎新屋敷	神功皇后車	(明治20年筒井町が購入）
◎中之切	張良車	（明治11年常滑市西ノロが購入）
●戸田道	弁天車	（戦災焼失）
▽古　江	神楽車	（明治年代他所へ売却）
●禰宜町	胡蝶車	(明治20年頃焼失）
▽禰宜町	人形不定車	（所在不明）

金明録（猿猴庵日記）の文政4年（1821）6月15日を引用すると

一五日　曇、ながせ空　片端より本町通賑合。又、広井村見舞車、不残出る。但し、広井上ノ切、新屋敷、八切右三ケ所の車計り片端へ行、跡々の車は　禰宜丁ニツ、内屋敷一、花車二、戸田道ニツ。小鳥落一ツ．川通りを大船町迄来る。珍敷故、大に賑合。

とありこの年の天王祭に広井村の見舞車は11輌曳かれている。又名古屋市史　風俗編では嘉永4年（1851）には見舞車が35輌程存在した記録があり、「名古屋祭」に記述されている16輔（2輌の所在不明）の他にも見舞車が多々存在していたことになるし、その後他地区の祭礼車として譲渡され現存していても決しておかしくないと思われる。
名古屋祭に記載されている広井村の9輌の他にも諸文献では上ノ切、小江川、八切の記載がある。