公開日:2004.09.18  最終更新日:2020.07.03

晩春のある日、二階の窓辺でボンヤリと外を見ていた。蝶々がヒラヒラと舞い、それを追いかけるようにして走り回っている白いモノが目に入った。
おいおい、あれはさっきまでここででゴロゴロしていた我がこじろーではないかい。

よそ様の庭先を荒らしたり、道路で事故に遭わないように、室内で放し飼い?にしているのだが、時として我がnova家の厳重なる警戒網をかいくぐり、自由を謳歌してしまうこじろーである。

トイレの小窓、●●、■■、などその都度セキュリティホールを潰して対応するのだが、今日の脱出ルートは一体どこなのか。(後で調べたら窓の網戸が開いていたので、自分で開ける事を覚えたのだろう)
小一時間も鬼ごっこをしてやっと捕まえたのだが、またしても外遊にお出かけあそばしたのは、その数日後。

平日だったので私は仕事で、目撃した家人の話なのだが、朝外を黒い猫が通りかかったのだと。それを見たこじろー、窓目がけてまっしぐら。網戸があったのだが、勢いで外れてしまったそうな。力ずくの強行突破で皆唖然とするだけだったそうな。

電話で助っ人を頼み、捜索隊を結成したのだが、女子供にお縄を頂戴するようなヤワなネコじゃない。家の周りだが手の届かないところを悠然と闊歩するのだと。
ある隊員からの目撃情報では、近所の頑固爺が棒を持ってこじろーを追っかけていたともいう。
ところが、皆疲れ果て部屋で休憩していたら、窓から突然こじろーが飛び込んで来たという。(脱出ルートから帰還するとは律儀ではある)
顔中血だらけにしたこじろーは、与えられた水を一気に飲み干すとその場で寝てしまったという。よほど怖い目にあったのだろう。
帰宅した私がこじろーの顔を見ると丹下左膳か旗本退屈男(どちらも知らない人が多いんだろうな)

幾たびかの脱走騒ぎ、思春期独特の猫囃子に閉口した家人は、こじろーのタマを取れと声を揃えるのだ。逆らうすべのない私は週末に動物病院の門を叩くのだった。。。
「この傷はどうしました?」問診する医師に代弁する私。「これこれしかじか。。。。」
にやりとする医師は一言「この猫は夕刊勇敢な猫ですよ。敵に背中を向けず正面から立ち向かったから顔に傷を負ったのです。」
背中に傷持つ武士は卑怯もの。顔(正面だったかな)に傷がある武士は『男前(傷)』といって勇敢の証だった。と何かの本で読んだ記憶がある。
だが、私は知っている。こじろーは目の前に手を出されると、手を出さずに顔を出して噛もうとする癖がある。
大方よその猫にノホホンと顔を突き出して引っ掻かれでもしたのだろう。
近頃は借りてきた猫状態のこじろーである…………